R06-04 第4回例会 10月12日(土)

2024年10月12日(土) 14:00-16:10 附属大泉小学校(オンラインzoom併用)

14:00~ 開 会 
14:10~15:00 【研究発表1】 

高等学校古典文学教育における概念的理解への新たな提案
―国際バカロレア教育DP日本語Aの方略を用いた比較分析―
東京学芸大学大学院 中村 純子 先生 
東京学芸大学附属国際中等教育学校 浅井 悦代 先生 

古典の授業では、文法の暗記と現代語訳の重視により、学習者にとって現代社会の中で生かせる観点が弱くなり、古典を学ぶ意義を見いだせない状況が続いてきた。そこで、本研究では、古典「を」理解することをふまえ、さらに古典「で」普遍的で汎用性のある深い学びへの到達を目指す、新たな古典教育の方略を提案する。
DP「文学」では、指導目標の一つに、文学作品を通して、 人間が抱える問題に対して、テクストがどのような見解をもたらしているかを理解することをかかげている。最終課題の一つ、試験問題2では、概念的な問いに対して2つの文学作品を比較分析する小論文課題が出題される。その対策として、複数の作品を概念的な観点を用いて比較分析し、洋の東西や時代を越えた普遍的なテーマを考察する授業に取り組んでいる。  
東京学芸大学附属国際中等教育学校のDP「文学」では、2024年1月に、高校2年生(DP1年)の授業で『源氏物語』を扱った。登場人物の造形について、『源氏物語』の複数の作家による現代語訳の表現を分析したり、それまでに学んできた文学作品の登場人物と比較して新たな解釈を論じたりしていた。 
この指導方略は、古典と近現代の小説の両方を扱う「言語文化」や、「古典探究」と「文学国語」にも活用できるものである。 

15:10~16:00 【研究発表2】 

「学習評価の起因となる鑑識眼と読解方略の改善に関する研究」 
―説明的文章の要約に着目して―
江戸川学園取手小学校 藤原 隆博 先生

本研究は、小学4年生を対象に、教師の鑑識眼と学習者の読解方略の改善過程を追跡し、両者の関係性を明らかにする実践的な研究である。鑑識眼とは、アイスナー(Eisner,E.W)(1976)が提唱した概念で,教師が学習者の学習状況を的確に把握し、適切なフィードバックを行う能力を指す。本研究では、教師の鑑識眼と学習者の読解方略の改善がどのように関係するかを質的に分析した。授業において教師の指導言と学習者の反応を追跡し、授業後に行った観察者(クリティカルフレンド)とのフィードバックセッションを通じて教師自身の鑑識眼の改善を図り、指導言の変遷と学習者の読解方略の様相を追跡した。 
その結果、教師の指導言の変遷と学習者の読解方略の質的改善が関係し合うエピソードが確認された。学習者が自身の学習上の課題に照らし合わせ、教師の指導言から役立てられる読解方略を、自分なりに構築した事例である。学習者集団には、文章の要点を捉え、要約する能力が向上し、パフォーマンス評価においても成果が見られた。 
今後に向けて、鑑識眼を改善するプロセスの向上や、読解方略の改善に向かう学習者への追跡の期間の長期化等による事例の蓄積や、教師の鑑識眼と学習者の読解方略の改善過程に見られる因果関係の更なる考究の展開等を構想している。 

16:00~16:10 事務連絡 閉会